はじめに、おおよそ1年以上動かない遊休金型を廃棄するか保管を続けるかの検討を行ないます。
使わない金型を生産工場に無償で保管させることは、下請法で禁止されています。
このため、親事業者(メーカー様、Tier1様など、以下、メーカーと表現します)」は、下請法違反を避けるために「金型を廃棄する」「金型を引き取る」「金型保管料を支払う」などの選択肢から適切な対応を選ぶ必要があります。
ここでは、遊休金型を廃棄するか保管を続けるかの具体的な検討順序と注意点をご案内します。
【STEP 1】まずは「廃棄」を検討
【STEP 2】廃棄候補金型の確認と最終決定
【STEP 3】廃棄できない遊休金型は、協力工場以外での保管を検討
金型の外部保管施設として、日本成型産業(株)の「金型ロッカー」があります。
「金型ロッカー」へ預けることは、下請法リスクを明確に回避できる選択肢のひとつです。
【STEP 1】まずは「廃棄」を検討します
最初に、保管している金型の中から廃棄できるものがないか検討します。
【目安となる保管期間】
・自動車関連産業の金型 :量産終了後15年
・産業機械関連の金型 :量産終了後10~15年
・電機・電子・情報関連産業:最終生産後3~5年
・上記の期間にかかわらず、廃棄が検討できる金型があれば、積極的に候補に挙げます。
※ 「型を用いて製品を製造する全ての事業者の皆様方へ」中小企業庁資料を参考にしました。
【STEP 2】廃棄候補金型の確認と最終決定をします
購買部門などが廃棄候補のリストを作成し、技術部門、管理部門、営業部門、役員なども含めた関係者で廃棄の可否を確認・
検討します。
廃棄が決定した場合は、関係者の承認印をもらいます。
・廃棄責任の所在を明確にするため、購買担当者だけの判断は避けたほうが無難です。
・創業当時に活躍した金型など「会社の基礎を築いた金型」として大切にされているケースもあります。
このような金型は、経営層の意向も踏まえ、慎重に廃棄を検討することをおすすめします。
・廃棄が決定した場合は、形状面の切断をおこない、使えなくなった金型の写真を撮影し記録を保存します。
廃棄証明書があると尚いいです。協力工場に廃棄をお願いする場合は、手数料をお支払いします。
日本成型産業(株)では、手数料を頂きますが、金型廃棄のお手伝いをさせて頂いております。
【STEP 3】廃棄できない遊休金型は、協力工場以外での保管を検討します
〇自社敷地内にスペースがある場合:
・建屋がある場合は、湿度に気を付けて保管します。
金型ラック、自動倉庫などがあると空間スペースを有効に活用できます。但し、地震対策はしっかりと行ないます。
〇自社敷地内にスペースが無い場合:
・もし建屋がない場合は、金型保管庫の新設を検討するのも一つの方法です。
〇協力工場に預ける場合の保管料の考え方:
・生産設備(成形機など)を置いた場合のスペース(㎡)から算出されるひと月の利益を基準に、金型の専有面積に応じた保管料
を算出し、お支払いいたします。
〇自社敷地内ではなく、協力工場でもない外部保管施設に預ける場合。
・日本成型産業(株)では、遊休金型の保管を専門とする屋内型の金型用トランクルーム「金型ロッカー」の運営管理を行なって
います。
「金型ロッカー」以外にも金型を預かる施設がありますので、インターネットなどで検索してみてください。
〇金型を外部に預ける3パターンとは
金型を外部に預ける方法には、主に以下の3パターンがあります。
・メーカーが外部保管施設と契約し、金型の出し入れなどの管理もメーカ側が行ないます。
・メーカーが外部保管施設と契約し、金型の出し入れなどの管理は協力工場に依頼し、管理料をお支払いします。
・協力工場に外部保管施設と契約してもらい、金型の出し入れや管理なども生産工場が行ない、保管料と管理料を合わせてメーカ
ーが支払います。
〇金型を外部に預けるメリットとは
金型を外部に預けることは、単にスペースを節約するだけでなく、関わる全ての企業にとって大きな利益をもたらし、ひいては国内経済の活性化にも貢献する「Win-Win-Win」の取り組みです。
・メーカーにとって:下請法遵守とコストダウンの可能性につながります。
金型を外部に委託することで下請法遵守が明確化されます。生産工場が活気づき、生産能力が向上することで、メーカーはより安
定的に生産を委託でき、生産量が増加することで、製品単価の見直し(コストダウン)の交渉も検討できます。
・生産工場にとって:生産性の向上と競争力強化につながります。
遊休金型が無くなることで工場内にスペースが生まれ、整理整頓が進み、作業環境が改善されます。空いたスペースに新たな生産 設備を導入できるようになり、生産能力の増強や効率化が図られ、競争力強化につながります。清潔で新しい設備が導入された工 場は、新3K職場となり、特に若い世代にとって魅力的な職場となり、人材確保や職場環境の改善が図られる工場全体の活性化に つながります。生産性が向上し、活気ある職場になることで、メーカーからの生産委託の集約化や新たな受注獲得につながりやす くなります。仕事量の増加は売上・利益の向上に直結し、結果として従業員の賃金アップにつながる可能性があります。
・機械メーカーにとって:販売数の増加が見込まれます。
生産工場が新たな設備投資を積極的に行なうようになるため、機械メーカーは自社製品の販売台数を増やすことができます。これ は、機械メーカー全体の活性化にも貢献します。
金型の外部保管は、メーカーは下請法遵守の明確化、生産工場は生産性が向上、成形機などの機械メーカーは機械販売が伸びることで、国内の景気循環の流れに刺激を与えることが出来る重要な取り組みです
。
この手順を参考に効率的な金型管理を進めてください。