金型保管料の算出方法


はじめに、本ページにおける表現について、以下の通りとさせていただきます。
メーカー: メーカー・Tier1などの金型所有企業(委託事業者)
協力工場: 実際に製造を担う中小受託事業者(受託事業者)
遊休金型:おおよそ1年以上生産をしていない金型で、今後も生産の見込みはないが廃棄できない金型。

金型保管料の算出方法は複数ありますが、以下の例はその一つとしてご参照ください。
説明が長文になること、ご了承ください。

〇 メーカーが協力工場に預ける場合の保管料の考え方
 一般に、「工場は生産を行なう場所」です。
 協力工場に遊休金型を置くことは、本来、収益を生むべき生産設備(成形機等)を置けるはずの場所に、収益を生まないものを置
 くことになります。
 そのため、協力工場内で遊休金型を保管してもらう場合は、「そのスペースで本来得られるはずの利益(機会損失)」を基準に算 出する必要があります。

  ここでは、メーカーが協力工場に金型を預ける場合の保管料の算出方法例をご案内します。
 ・協力工場で金型を保管する場合は、生産設備(成形機など)を置いた場合のスペース(㎡)から算出されるひと月の利益を基準
  に、金型の専有面積に応じ た保管料を算出します。
 ・金型の専有面積は、床に接する「底面積」ではなく、「取り付けプレート等を含む「最大外形寸法(四角面積)」で算出してく
  ださい。
 ・ 竪型機や高付加価値品、人によるインサート成形などをメインに扱われている工場もありますので、状況に応じて柔軟に対応し
   てください。
 ・ 尚、金型の重ね置きは地震等で落下の危険があるので禁止です。

   【計算例】
   ・80~100t横型成形機の面積が6㎡、コンベアー等を含めた生産ラインの面積が4㎡で合わせて10㎡(100,000㎠)、
    1ヶ月の利益が300,000円の場合
   ・10㎡(100,000㎠)あたり300,000円の利益
   ・幅200㎜×型厚200㎜×高250㎜の金型の場合、最大外形寸法は400㎠/1型(体積ではありません)。
   ・この四角面積に金型を敷き詰めれば、250個の金型を置くことができます。
    (実際には通路が必要なため、保管可能な個数はこれより少なくなり、1型あたりの単価はさらに上がります)
   ・300,000円 ÷ 250個 = 1,200円/月 1型あたり月額1,200円以上が保管料として算出できます。
   ・ちなみに1,100㎜×1,100㎜のパレットに置くと、25型を置くことが可能です。
    25型×1,200円=月額30,000円/1パレットになるので、1パレット30,000円以上としても算出できます。
    尚、実際に金型を載せる場合は、パレットの耐荷重に注意します。
    また、金型の段積みは禁止です。重量用ラックなどを購入する場合は、その費用も考慮します。

 ※ 協力工場の近くの地価公示価格や近隣倉庫の坪当たり単価のみで算出する方法がありますが、これは工場ではなく倉庫に預け
   た場合の場所代のみの参考価格です。協力工場は倉庫ではありませんのでご注意ください。
 ※ 著しく価格の低い契約は、双方の合意があったとしても取適法に抵触する場合がありますので注意が必要です。


協力工場が外部の賃貸倉庫を契約して保管する場合の考え方
 (協力工場が自発的に借りる場合、および、メーカーの依頼で借りる場合の両方を含みます)

【賃貸倉庫を利用する場合の計算について】
 ・本例は、2年間の賃貸倉庫を借りる場合を例とします。

 1.賃貸契約諸経費
   敷金、礼金、仲介手数料、動産保険などの諸経費を24ヶ月で割ります。
   2年枚に更新手数料がかかる場合もありますが、今回は2年間を借りる例なので無視します。
 2.初期費用(設備導入費)
   吊り具(クレーン、チェーンブロック、スリング、アイボルト等)、エアコン本体、運搬機器(フォークリフト等)、ヘルメ
   ット、パレット、重量用ラック(ベタ置きの場合は不要)電気引き込み工事費用を24ヶ月で割ります。
 3.ランニングコスト(毎月の負担) 月額費用
   毎月の家賃(倉庫代)のほか、電気代、警備会社への契約費用、人件費(専任管理者がいる場合)消耗品(洗剤、薬箱、ティ
   ッシュペーパーなど)などがかかります。
 4.「実効面積」の算出、 有効スペースの確認
   賃貸契約した敷地ではなく倉庫内のスペースで計算します。
   倉庫内の全部に金型を敷き詰められませんので、金型を置くスペース、通路のスペース、運搬機器などを置くスペースの図面
   を描きます。
   その中から金型を置くことが出来るスペースの「実行面積」を出します。
   実効面積 = 倉庫全体の面積 - (通路 + 運搬機器置き場 + 作業スペース)
   ※ 金型の上に金型を載せる段積みは、危険なため禁止です。
 5.金型の四角面積計算
   金型1型(面、個)の面積を出しますが、金型の保管面積は、床に接する「底面積」ではなく、「取り付けプレート等を含む「
   最大外形寸法(四角面積)」で算出してください。
   なお、温調用継手や水口の出っ張り分がありますが、最大外形寸法に収まるのでしたら、無視してもいいでしょう。
 6.空きスペースと運営上の「安全率」について
   問題なのが、賃貸倉庫の「実行面積」の全部に金型を置くことができる場合と、空きスペースができてしまう場合です。
   「実効面積」すべてを常に埋めることには、無理があります。
   理由は、常に満杯で計算すると、1型でも金型が抜けた瞬間にその区画の部分が赤字になるためです。
   空きスペースが多いと「計算上は赤字ではないのに、マイナスになってしまう」ということになります。
   ここはどうしようもないので「想定稼働率」として、あらかじめ「70%から80%程度の稼働」を前提に単価を設定します。
 7.事業としての利益
   賃貸倉庫に金型を保管することで、全く利益が出ないことはおかしいので、15%を利益として計算します。
 8.別途、移動コストがかかります
   賃貸倉庫の利用で忘れがちなのが、「金型を動かすためのコスト」です。
   運ぶための人や車がなければ、入出庫はできません。
   外部倉庫を利用する場合、以下の「移動」に伴う費用を必ず加算する必要があります。
   ・金型を移動する人件費(倉庫へ往復する時間と入出庫作業をする社員の人件費)、車両、燃料代、維持費、または、運送業
    者への委託費用等が発生します。
   ・ここは、初めに金型を倉庫に持ち込む際の片道分を計算し、その後、金型が動くたびに、別途お支払いします。

 【毎月の金型保管料の考え方】
 「1~3」の合計で、1ヶ月にかかる費用が算出できます。
 「4」は、倉庫に置ける金型の量を算出できます。
 「5」は、置くことができる金型の量が算出できます。
 「6」は、安全率とします。
 「7」は、利益です。
 「8」は、金型を出し入れする際にのみ発生する経費です。


  ※ 賃貸倉庫に預ける場合は、地価公示価格や近隣倉庫の坪当たり単価などを参考に算出する方法もありますが、諸々の費用を
    加算することを忘れないようにしてください。
  ※ 一見安く見える賃貸倉庫も、実は「金型1型あたりの実質保管単価」が大きく膨らんでいるケースが多々あります。



【事例紹介】
○ 協力工場に金型を預けているメーカー担当者様へ
 保管費用の算出方法について、適切な設定がなされているでしょうか。
 次は、ある協力工場の経営者様からお話があった実例です。

 ・事例:工場内で保管しているほぼ同じ大きさの遊休金型、A社とB社の価格差について
  A社の提示:月額100円台 / 1型 近隣の地価や賃貸倉庫の坪単価から「面積」のみで算出。
        さらに3段積みを前提とした価格設定。
  B社の提示:月額2,000円 / 1型 管理工数、安全性、生産スペースの占有などを考慮した適正価格を提示。
 経営者様は、この考え方の差に困惑されていました。

 A社の計算には、以下の視点が入っていません。
 1.機会損失の視点
   協力工場のスペースは「生産設備」を置くための場所です。遊休金型を置くことは、工場の生産性を阻害しています。
   前述のとおり、協力工場に遊休金型を置くことは、本来、収益を生むべき生産設備(成形機等)を置けるはずの場所に、収益
   を生まないものを置くことになります。
   工場内に遊休金型を保管してもらう場合と賃貸倉庫に預ける場合には差がありますので、工場内に置く場合は「そのスペース
   で本来得られるはずの利益(機会損失)」を基準に算出する必要があります。
 2.安全性とリスクの軽視
   安全性の視点でも、ラック等を用いない空間利用である「3段積み」は非常に危険です。
   地震等の災害時に落下したり、作業中にぶつけたりして落下すれば、金型や設備の損傷だけでなく、人命に関わる重大な事故
   につながる恐れがあります。
   また、3段積みを前提とした価格設定は、安全性を無視した不当な原価計算とみなされ、取適法に抵触する(指導の対象となる
   )極めてリスクの高い行為です。
 ※ 法的な注意点
   取適法では、メーカーが遊休金型を、協力工場に無償または不当な低価格で保管させることを厳しく禁じています。
   たとえ書面で合意があっても、実情に合わない低額な保管料の押し付けや、保管効率を上げるための重量用ラック購入の強要
   などは、「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があり、コンプライアンス上の重大なリスクとなります。

  金型保管費用を算出される際は、上記の通り「メーカーが協力工場に預ける場合の保管料の考え方」や「協力工場が外部の賃貸倉
  庫を契約して保管する場合の考え方 」を参考に、適正な費用を考慮いただき。適正な費用を協議いただくようお願いいたします。


〇 金型専用の外部保管施設の活用:
  金型の外部保管施設として、日本成型産業(株)が運営している「金型ロッカー」があります。
 「金型ロッカー」を利用して金型を保管することは、取適法違反の指摘を受ける可能性が明確に解消され、法令を遵守でき、
  コンプライアンスリスクゼロ化につながります。
  尚、「金型ロッカー」以外にも金型を預かる施設がありますので、インターネットなどで検索してみてください。