金型保管料の算出方法

金型保管料の算出方法は複数ありますが、以下の例はその一つとしてご参照ください。

〇 協力工場に預ける場合の保管料の考え方
  一般に協力工場(成形工場などの生産を行なう工場)は「生産を行う場所」です。
  協力工場に使わない金型を置くことは、生産設備を置ける場所に金型を置くことになります。
  このため、協力工場で金型を保管する場合は、そのスペースで得られるはずの利益以上の保管料を支払う必要があります。

  ここでは、協力工場に金型を預ける場合の保管料の算出方法例をお伝えします。
 ・はじめに生産設備(成形機など)を置いた場合のスペース(㎡)から算出されるひと月の利益を基準に、金型の専有面積に
  応じた保管料を算出します。
 ・本計算例はあくまでも例です。竪型機や高付加価値品などをメインに扱われている工場もありますので、状況に応じて柔軟に
  対応してください。
   【計算例】
   ・80~100t横型成形機の面積が6㎡、コンベアー等を含めた生産ラインの面積が4㎡で合わせて10㎡(100,000㎠)、
    1ヶ月の利益が300,000円の場合
   ・10㎡(100,000㎠)あたり300,000円の利益
   ・幅200㎜×型厚200㎜×高250㎜の金型の場合、占有面積は400㎠/1型(体積ではありません)。
   ・この面積に金型を敷き詰めれば、250個の金型を置くことができます(本来は通路が必要です)。
   ・300,000円 ÷ 250個 = 1,200円/月 1型あたり月額1,200円が保管料として算出できます。
   ・ちなみに1,100㎜×1,100㎜のパレットに置くと、25型を置くことが可能です。
    25型×1,200円=月額30,000円/1パレットになるので、1パレット30,000円としても算出できます。
    但し、実際に金型を載せる場合は、パレットの耐荷重に注意します。
    また、金型の段積みは禁止です。重量用ラックなどを購入する場合は、その費用も考慮します。
 ※ 地価公示価格や近隣倉庫の坪当たり単価などを参考に算出する方法がありますが、これは工場ではなく倉庫に預けた場合の
   場所代のみの参考価格です。
   尚、著しく価格の低い契約は、双方の合意があったとしても下請法に抵触する場合がありますので十分な注意が必要です。

〇 賃貸倉庫に預ける場合の保管料の考え方
 ・賃貸倉庫に預ける場合は、地価公示価格や近隣倉庫の坪当たり単価などを参考に算出する方法があります。
  ・本例は、2年間の賃貸倉庫を借りる場合を例とします。
   また、作業費用は含まれていません。専任管理者を置く場合は人件費も加えます。
   ・2年間の倉庫の賃料、敷金、礼金、仲介手数料を計算し、24ヶ月で割ります。
   ・倉庫で使用する運搬機器(フォークリフトなど)、クレーン(チェーンブロック等を含む)、吊り具(スリングなど)、
    エアコン本体代、警備会社からの購入品、消耗品代(ヘルメット、工業用洗剤、薬箱、ごみ箱など)など購入予定品の
    見積もりを取り、24ヶ月で割ります。
    ・金型の段積みは禁止です。
    ・重量用ラックなどを購入する場合は、その費用負担も発生します。
    ・エアコンや電動ホイストを設置するために電気を引く場合は、その費用も発生します。
   ・月々の電気代見込み、警備会社への契約費用など、毎月かかる費用を計算します。
   ・賃貸契約した敷地全部に金型を敷き詰められませんので、倉庫のスペースに金型を置くスペース、通路のスペース、
    運搬機器などを置くスペースの図面を描きます。
    その中から金型を置くことが出来るスペースの面積を出します。
   ・上記の価格を金型の専有スペースで割り金額を算出します。

〇 金型を協力工場に預けている企業様へ、金型保管費用の算出についてのご注意
  保管費用の算出方法について注意点があります。
  現在、一部の企業様から、「金型を預けている近隣の地価公示価格や賃貸倉庫の坪単価のみを参考に、金型を3段に重ねた面積で
  金型保管費用を計算されているケースがある。」と、伺いました。
  その金額は、あくまで近隣倉庫の賃料から金型の底面の面積で割っただけの価格です。
  前述の通り、協力工場に使わない金型を置くことは、生産設備を置ける場所に金型を置くことになりますし、賃貸倉庫に預ける
  場合も、賃料以外にも様々な費用がかかります。

  下請法(下請代金支払遅延等防止法)では、親事業者(金型を預ける側)が下請事業者(協力工場)に対し、不当に経済上の利益
  を提供させることを禁じています。
  不適切な方法で算出した低額な保管費用を協力工場に押し付けたり、空間利用のため重量用ラックの購入を強いることは、たとえ
  合意があったとしても、前述の下請法に抵触する可能性がありますので十分な注意が必要です。

  金型保管費用を算出される際は、上に記した「協力工場に預ける場合の保管料の考え方」や「賃貸倉庫に預ける場合の保管料の考
  え方」を参考に、適正な費用を考慮いただくようお願いいたします。
  金型保管費用の算出についてご相談がある場合は、お声がけください。

  なお、金型の重ね置きは地震等で落下の危険があるので禁止です。

〇 金型専用の外部保管施設の活用:
  金型の外部保管施設として、日本成型産業(株)が運営・管理している「金型ロッカー」があります。
 「金型ロッカー」を利用して金型を保管することは、下請法違反の指摘を受ける可能性が明確に解消され、法令を遵守でき、
  コンプライアンスリスクゼロ化につながります。
  なお「金型ロッカー」以外にも金型を預かる施設がありますので、インターネットなどで検索してみてください。